宇宿貝塚史跡公園

施設の概要

 宇宿貝塚史跡公園は、昭和61年(1986)に国史跡に指定された「宇宿貝塚」の真上に整備されている施設で、平成16年(2004)2月9日に開園しました。

 この公園では、発掘調査で発見された縄文時代晩期に位置づけられる石組の竪穴建物跡や中世のお墓・溝等の遺構や、遺物を一部埋め戻さず、調査当時の状態で見学できるような露出展示を行っています。また、剥ぎ取った土層断面の展示もしており、各時期における遺跡の埋没過程も知ることができます。

 遺跡の上を歩きながらタイムトリップした気分で、昔の暮らしに想いをめぐらせてみませんか。

展示紹介

 当園では、宇宿貝塚の発掘調査で出土した縄文時代、中世の遺構の露出展示と土器や石器、貝製品等の遺物の展示を行っております。

 宇宿貝塚の下層で確認された縄文時代に位置づけられる石組の竪穴建物跡は、昭和30年(1955)の調査で確認されたもので、その周辺に散在する土器や石器、貝殻等もそのままの形で展示しています。また、土層の剥ぎ取り断面を近くで見ることのできるコーナーもあり、当時、この地域に暮らしていた人々の生活の一端を知ることができます。

 平成5年(1993)から平成9年(1997)の発掘調査で確認された中世に位置づけられる土坑、Ⅴ字状の溝等の遺構と、昭和53年(1978)の発掘調査で検出された全国的にも珍しい母子埋葬遺構も露出展示しています。母子埋葬遺構で確認された壮年女性の人骨は、奄美市歴史民俗資料館の考古資料展示室にて展示しています。

 出土遺物の展示コーナーでは、宇宿貝塚で出土した縄文時代から中世にかけての出土資料をはじめ、宇宿貝塚東側で確認された宇宿ダンベ山遺跡から出土した遺物の展示も行っています。出土資料を通して、宇宿貝塚の所在する場所が、縄文時代の居住空間及び、中世の墓域空間として、時代によって様々な形で人々に利用されている様子を理解することができます。

施設内の様子
施設内の様子

「宇宿貝塚」の縄文時代

 縄文時代に入ると、氷河期が終わって、温暖な気候になり、北海道から沖縄諸島に至るまで地域色の異なる縄文文化が花開きました。縄文時代の人びとは、山・川・海で食料となる動植物や魚介類等を採りながら、各地域における自然環境を巧みに利用しながら暮らしていました。

 これまでの宇宿貝塚の発掘調査では、最も気候が温暖化し、現在の海水準よりも2~3mほど高くなった「縄文海進」と呼ばれる大規模な海進の時期を迎える縄文時代前期頃から人びとが暮らしはじめたことが分かっています。縄文時代晩期になると、集落が営まれ、遺跡前方に広がる発達したサンゴ礁海域で魚介類を採捕する生活を中心とし、山地ではシイの実等も得て貯蓄する定住的な生活を送っていたと考えられています。そのため、シイの実等の堅果類をすりつぶして食べるための大型の石皿や敲石が現れました。

 このような安定的な暮らしによって、リュウキュウイノシシやクジラ、ジュゴン等の骨を素材とした骨製品やオオツタノハ・サラサバテイラ・ウミギクガイを素材とした貝製品等の装飾品が発達することになりました。 他にも、宇宿貝塚の発掘調査では、南九州の縄文時代後期に位置づけられる土器である「市来式土器」の破片や地元では入手できない黒曜石が発見されたことから、九州と交流をしていた様子も明らかとなりました。

「宇宿貝塚」の中世

 11世紀後半~12世紀前半は、奄美群島の社会が、大きな変化を迎えます。

 喜界島では、掘立柱建物跡や墓地が多数確認された「城久遺跡」が最盛期を迎え、本土産の土師器・須恵器・滑石製石鍋・布目圧痕土器(製塩壺)、舶載品の白磁・青磁・高麗無釉陶器等が大量に出土し、九州から多く移住者が来た様子が窺えます。同時期に、徳之島では、朝鮮半島の高麗無釉陶器の技術的系譜を引く陶質土器(カムィヤキ)が「カムィヤキ陶器窯跡」で大量生産されました。

 宇宿貝塚でも、滑石製石鍋・布目圧痕土器(焼塩壺)・玉縁口縁白磁碗・青磁・須恵器等の搬入遺物のほか、カムィヤキも多数発見されています。また、Ⅴ字溝で区画された空間に墓地が形成されています。発見当初、弥生時代に位置づけられていたガラス玉が副葬された母子埋葬の墓壙は、その後の発掘調査の再検討から、中世の時期である可能性が高いことがわかりました。宇宿貝塚の東側に位置するダンベ山遺跡からも中世の墓壙群が確認されているので、この一帯が中世の墓地として利用されていたと思われます。

このような奄美群島における動態が、沖縄諸島に波及して、「グスク時代」が開始したと考えられています。また、この頃、稲作農耕が開始され、鉄器が普及しはじめ、南西諸島で政治的社会の形成が急速に進んでいきます。

宇宿貝塚の土層断面
宇宿貝塚の土層断面

施設情報

所在地〒894-0501
鹿児島県奄美市笠利町大字宇宿大籠2301
TEL0997-63-0054
開館時間午前9時~午後5時
(入館は午後4時30分まで)
休館日月曜日・祝祭日の翌日・12月28日~1月4日
入館料一般200円/大学・高校生100円/小・中学生50円
歴史民俗資料館との共通券 一般のみ310円
アクセス奄美空港より車で5分/徒歩30分
名瀬市街地より車でおよそ50分
「宇宿バス局前」停留所より徒歩5分
歴史民俗資料館より車で5分/徒歩30分

史跡保存活用計画書PDF